創造基盤としてのVisualisation Algorithm

自分でここ数年かけて「幾何学模様」の創造に取り組んで来たのだが、その行為を通してさまざまな学びがあった。それは創造原理のようなものであり、「ビジュアライゼーション・アルゴリズム™(英語名:Visualisation Argorithm)」と名付けた。そのアルゴリズムを活用した集団設計というものができるならば、ひとつの社会的な課題解決につながるのではないかと考えている。アルゴリズム自体の完成度はまだ低いので今後ブラッシュアップが必要なのだが、まずはその背景となる考え方を以下に書いておきたい。

自分にとって積年の課題とは「どうしたら世界は美しくなるのか」ということであり、そのために「美しい」とは何なのかを発見すること、そして自らが「美しい」創造をできるようになることに長い時間を費やしてきた。またその過程において、個人としての創造行為と集団による創造行為のプロセスの違いについて、組織的なクリエイション、デザインの現場に社会人として身を置くなかで思うことが多々あったのだが、それは「集団においては声の大きい人の意見が通りやすい」ということに対する疑問であり、またそれは言い換えると「立場の上の人の意見に振り回されやすい」ということへの疑問である。そういった事が、振り返って都市や建造物、プロダクトからコンテンツまで浸透し、今の世の中、目に見える世界を生み出していることを考えると、今までのクリエイションの組織論というものに対し、疑いの目を持ってもいいのではないかと私は考える。

個人としての創造行為、アーティストが何を考えて、いかに表現するか、素材の選択から表現方法まで、その個人の判断により行われる。個人が何かを生み出す場合には、ダイレクトにその人の思考概念が可視化、具体化されるわけだが、集団の場合、特に自治体や行政、企業などの集団で何かを生みだす場合には、それこそ予算からスケジュール、チーム構成まで多様な変数が発生し、結果としてよくわからないものが生み出されるということが多数繰り返されていることは、ご存知の通りだろう。ある種の失望感を、美的質感に欠けた生活空間の中に感じるということは、市民そして人類にとって大変不幸なことだと私は思うが、それを解決するような方法が存在するのだろうか。

創造性は個人であれ集団であれ自由であるべきで、それこそ美しい創造から美しくない創造まで多様であるからいいのだ、という考え方もあるかもしれない。でも、社会に属する人間として、私は諦めずより全体にアプローチする方法を考えたいと思ってやってきたからには、何かしらそういった概念を具体化していきたいと思っている。私自身、個の存在として自らの美的感覚を表出させる行為をしながら、美的感覚を高めるような集団をつくりあげていくこと、そしてその集団を引っ張って行くような方法論、システムのようなものを用意できるかだろうか。

まず、本当に優れた一握りのクリエイターを組織として支えていくような運営方法か、クリエイター集団を有機的に機能させていく運営方法か、集団としてのクリエイションはその2つに進化していくだろうと考える。ある種天才的な才能を持った人などほとんどいないわけだから、前者のような本当に優秀な人を中心とする場合を除いたほとんどのケースにおいては、中途半端な才能により引き起こされる「声が大きい人、立場の大きい人の意見が優先される」という流れを排除しながら。関係する人が合理的に設計を進め、判断を繰り返していくための「基準」のようなものを、チームの背後に用意する必要があるだろう。優れた永続する企業体は、システムのようなものが脈々と受け継がれ、カリスマが存在しない場合が多い。それと同じような仕組みを、クリエイティブチーム、デザインチームに構築するというアプローチである。

では、どのようにその「基準」というものを用意すればいいのか、そのひとつの方法論として、私の方で取りまとめている「ビジュアライゼーション・アルゴリズム」というものを中心に据えて、ロジック、ストラテジー、チーム運営、フィードバック、そういったシステムを有機的に構築していく方法を考える。

そのアルゴリズムは、ビジュアルを生成していくために必要な視覚造形の「要素」と「構成」の言語化による整理と共有、そして要素の「配置」「方向」「バランス」という構成の基本をひとつのルールとして可視化していくことが基本となる。言い換えればその要素の扱いと構成のルールそのものがビジュアルの「アイデンティティ」といえるのであるが、例えばブランディングのアイデンティティのようにその存在や運営方法が固定化されたものではなく、その背景にある「構成の概念」を共有しながら、個々のデザイナーがそのルールの範疇で創造性を発揮していくことを目標とする。この「クリエイターの創造性を発揮する領域を確保する」というコンセプトが、集団設計の中で個を最大化し多様な才能を受け入れる基本となる。加えて、レイアウト、ユーザーインターフェース、インタラクションといった基本的な構造要素の扱いを可視化したアルゴリズムを用意する。

これらアルゴリズムはひとつの幹であり、身体におけるDNA情報のようなものでしかないので、それら有機的に活用し実体化ていくためには、仕組み化、人とテクノロジーの融合したひとつのシステムの構築が必要となってくる。例えば、表現の技術の知識を学び共有することもアルゴリズムの活用ににおいて重要なポイントとなる。人間の視覚認知の構造理解と、人間の行動を決定する基本知識はどこからやってきたのかといった知識の探究とその共有、そして多様な過去事例のインプットとライブラリ化を進めていくとともに、チームづくり、フィードバック方法など有機的につなげていく。このような仕組みづくりは多くのクリエイティブチーム、デザインチームで行われていると思われるが、その軸となるビジュアライズ、可視化のロジックやメソッドを共有していないチームがほどんどではないかと思われる。そういったチームの拠り所となる「いかに表現を構築するか」の幹となる部分において、それを創造したり扱えるクリエイターがほとんどいないことが根本の課題ではあるのだが、私の考える「ビジュアライゼーション・アルゴリズム」が何かしら役に立つのではないかと考えている。

なお私が制作している幾何学模様はすべて、このアルゴリズムをベースに、3年で7500種類のバリエーションを生成している。ある種の共有されたロジックと、創造性の発揮という、右脳と左脳が融合したような世界観を感じていただければ幸いである。

ちょっと今回は抽象的かつ氷山の一角の話に終始してしまったが、今後少しずつそのアルゴリズムについても言語化し紹介していきたい。また社会実験を行いながらブラッシュアップしていきたいとも考えているので、興味のある方はぜひご連絡いただきたい。

 
本日のタイトル画像:

Infinite loop geometric pattern No.2109
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